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第11章 明日への勇気
時間だけが過ぎていく




オレはやっと言葉を発した


『何か…飲むか?』










『ううん。平気』



まだ少しぼんやりしているアイルが

オレが握っている左手を

きゅう~っと

少し握り返してくる







『ん・・・何だ?』




『りょうき……あのね…』








『うん?…どうした』





『なんか・・・うまく…言えない…』







『ふふっ・・・いいよ

ゆっくりで・・・いつでも』





アイルの手をそっとはなして

そのままアイルの頭やほっぺたを撫でる

顔の絆創膏やキズを少し避けながら




下の唇が大きくカサブタになっている

縫わずに済んだそうだが

痛ましさを感じずにはいられない




オレも…アイルにかけたい言葉は沢山

内側にフツフツと湧いてるのに

…うまく言えない



アイルと同じだ








『看護師さん…呼ぶよ?』




ナースコールを押した




程なくナースがやってきて
アイルの様子を確かめ検温を済ませる


「お熱はかりましょうね」



少ししたら医師と診察に来ると言って

すぐにナースが出ていった




再び二人になる







『リョウキ・・・』

『アイル・・・』





『『・・・』』



同時に呼び合ってしまった





『先に…』



『りょ…リョウキから…』




…オレは椅子に浅く座り直して

ベッドに肘をつくように近寄り

片手でアイルの頬に再び触れた











『アイル…生きててくれて……ありがとう』








生きててくれて…


再び生きようとしてくれて…



目をあけてくれて…


再びオレをみてくれて…



今…こうして

オレの前にいてくれてありがとう








これが・・・そしてその一言がオレの…



最も純粋な・・・素直な本音だった
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