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淫の館
第8章 火の躾

「館主様、これを…
まだ、納めていないものがありました。」

「ん?」

私は手を広げて、持っていた髪の毛を館主様に差し出した。

「髪の毛、どうしたんだ?」

「日付を数える為に、桟の間に隠しておりました。」

「記念に持っていたらどうだ?」

「もう必要がありません。
それに、全てを館主様に捧げると決めたのです。」

そう、男と呼んで憎むのも辞めて、私は皆と同じように心の中でも館主様と呼ぶことにした。

館主様は驚いていた。

その手を引いて、指を開き、手のひらに髪の毛を置いた。

「一部でも、世俗との繋がりを残していては、心が乱れます。
私は館主様のものですから…」

そう、私は囚われているのではない。
新しく生まれた私は館主様の為に生きることを自分で選んだのだ。


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