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銀木犀の香る寝屋であなたと
第9章 銀木犀の香りと共に
「ああっん、ああうぅ、す、すごく、いいっ、です」

「ああっ、気持ちい、いなっ。これじゃ止まれない」

 一樹の動きに珠子も連動し、腕と足を絡ませながら溶け合うように動いた。荒く息を吐きながらそれでも口づけし蜜を交換し合う。

 珠子は一樹の目を見つめる。自分がしっかり映っている。少しでも一樹子を目に焼き付けたく、快感に我を忘れそうになりながらも彼の全てに集中した。

「ああっ、珠子。も、もうダメだ」

「か、一樹さん、我慢なさらないでっ、あ、た、珠子の中で、おイキあそばしてぇっ、あ、ああんんっ」

 絶頂に耐えようとする、一樹の苦悶する表情に珠子もたまらなくなり熱くなってくる。

「あっ、かっ、はっ、ううぅ……」

 達した一樹は何度か身体をぶるっと震わせ、珠子の身体に沈み込んだ。(ああ……。中が温かい……)

「一樹さん。愛してます」

「僕もだ。愛してる……」

 繋がったまま愛をささやき合うと、珠子は身体の中から内圧を感じた。

「あ、なんだか、また、あっ……んっ」

「すまない。また……。今抜くから待ってて」

「いいえいいえ」

 珠子は再び一樹の腰に足を絡め固める。

「全部、全部ください。今までの……全部」

 喜びと強く欲する気持ちが珠子を占領する。

「辛くないのか……」

 顔を左右に振り珠子は涙ながらに答える。

「ずっとずっと兄さまのことを想って、他の人に身体を預けてきたのです。
今でもこれは夢じゃないかと思う。これ以上の快感を私は……感じたことがありません」

「珠子」

 一樹はけなげな珠子を強く抱きしめ耳元で囁いた。

「お前が満足するまで抱こう」

「ああ……」


 何度も激しく貫かれながら珠子は銀木犀の香りを嗅いだ。まるで一樹が銀木犀そのもののようだ。
自分の中を狂おしく駆け巡る一樹を抱きしめ、甘い香りにとろけながら珠子はこの山を、世界を銀木犀でいっぱいにしようと考える。
 どこに居ても香りが一樹に届きますようにと祈りながら。


――銀木犀の花言葉は『初恋』





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