この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
空蝉
第25章 想ひで
そぞろ歩きの 故郷の 遠い記憶の ひとコマは
小川に沿った あぜ道に そって広がる げんげ田の
薄紫の 花を摘み 飾りに編んだ 帰り道
仲間と帰る あのひとの 無邪気な笑顔 はしゃぎ声
少し、まぶしく 見送れば 振り向く目から 見つめられ
頬も染まった あかね空
そぞろ歩きの 故郷の 遠い記憶の ひとコマは
古い校舎の 裏側の 木立の中の 池ノ辺に
示し合わせず ふたりして そっと隠れた 昼休み
あなたの語る 夢を、ただ 夢見るように 聞きながら
なにも、語らぬ ひと時に 瞳を合わせ 唇を
そっと、重ねた 霞空
そぞろ歩きの 故郷の 遠くはならぬ 思い出は
遠く離れた あの人と 固くかわした 約束の
はかなさ知った 新しい 恋を伝える 片便り
あなたの夢の 傍らに 立てぬ、わたしを 泣きながら
じかに伝えて もらえずに 死んでゆくしか ない、恋を
そっと、流した 天の川