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縣男爵の憂鬱 〜 暁の星と月 番外編〜
第1章 縣男爵の憂鬱
「え〜⁉︎月城が暁さんの恋人だったの⁈」
帰るなり、礼也を質問攻めにした光は眼を丸くして驚く。
「ああ。暁の家の隣が月城の家で…二人は行ったり来たりしているらしい」
…隣の純日本式の家が月城の家だと聞き、礼也は再び仰天した。
道理で、暁があの家に固執したはずだ…と、礼也は思い当たった。
あの家で…二人は愛し合っているのだろう…。
…暁のあの華奢で儚げな身体を月城は思う様に貪っているのか…!
…はっと我に帰り、首を振る。
ま、また下劣な想像をしてしまった…!
暁のそんな姿を想像して、どうしようというのだ!
暁があまりに色っぽく、艶めかしかった為に、ついそんな想像をしてしまうのだ…。

…暁…キスが上手かったしな…。
かつて、自分が同性愛者だと告白した時に、暁は礼也にキスをした。
兄さんのことが好きでした…
…そう告げながら…。
あの甘美で禁断の果実のようなキスは、未だに忘れられない。
…あんなキスを…暁は月城と毎晩しているのか…
胸の奥がチリチリと痛むような不可思議な感情に襲われる。

「…礼也さん、どうしたの?」
光が不思議そうな貌をして礼也を見ていた。
「い、いや、…なんでもないよ。…とにかく、二人が幸せになってくれたらそれでいい」
大人らしい分別で、そう纏めた礼也に光はふと妖しい笑みを浮かべた。

「…そうね。暁さんは幸せになると思うわ。…月城はああ見えて、意外に情熱家でロマンチストだし。…きっと暁さんを凄く溺愛して可愛がるんじゃないかしら」
礼也は光の言葉を聞き咎めた。
「…ん?…なぜ君が月城のそんな一面を知っているんだね?…あ‼︎そういえば…昔、軽井沢の馬場で二人でなにやら親密にしていたことがあったな⁉︎…怖くて聞いたことがなかったが…あの時二人で何をしていたんだ⁈」
矢継ぎ早やに質問を繰り出す礼也に、光は輝くような美貌にどこか淫靡な笑みを浮かべ、礼也の頬にキスをした。
「…秘すれば花…て言うじゃない?…フフ…私は先に休むわ。お休みなさい」
「光さん!」
光は、しなやかに居間を後にした。

礼也は憮然とする。
「全く…!…月城め…油断も隙もない男だ!」
…月城…恐ろしい男だ。
私の大切な人の美味しいところを悉く奪ってゆく男…
…やはり彼は鬼門だ、鬼門!
礼也はその日、幾度も吐いた溜息をまた繰り返したのであった。
〜La Fin〜
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