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遠い日の約束。
第5章 忘れていた過去
「彩ちゃん元気だった?」

車に乗り窓を開けて田舎の空気を身体に浴びた。
都会と違って田舎の空気は澄んでいて気持ちが良い。

「華に会いたがってたぞ。本当は一緒に迎えに来る予定だったんだがな。裕介がグズッて寝かしつけてたよ」

裕介は彩ちゃんの一人息子で2歳になったばかりだった。

「裕ちゃんか…会ったら泣くかな」

「泣くな。かなり泣かれた」

経験済みにお父さんが笑いながら話していく。
家に向かう道中、彩ちゃんが戻って来てからのことを隅々まで話してくれた。
よっぽどうれしかったんだと思った。
結婚して数か月でシンガポールに旅立っていった彩ちゃん。
空港で見せたお父さんの泣き顔が今でも頭に浮かぶ。
生まれて初めて見たお父さんの涙だったから記憶に残っている。

遠くに我が家が見えてきた。
その前に人影があり、それが徐々に大きくなり誰なのか直ぐに分かった。

「彩ちゃん…」

ポロリと涙が零れた。

「よかったな」

そんな私に気がついて、お父さんが私の頭を撫でた。
双子より絆が深い姉妹。
車は家の前に到着して、私は車から降りて彩ちゃんに飛びついた。

「彩ちゃん!!」

「華ちゃん!!」

お互いがお互いの名前を呼び抱き合って泣いた。
ギュッと抱きしめるとギュッと抱きしめ返してくれる。
久しぶりの彩ちゃんの温もりにホッとする。
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