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やめて、やめないで(5DOLL三部作目)
第10章 感情と恋と身体
神崎が気が付いたように話しだす。
[近藤って好きな人とかいる?]

[前に聞かなかったっけ?]
私は即答した。

神崎は苦笑い…質問しなおした。
[お前って好きとか愛とか分かる?]

以前は考えてた。
[気になったり、一緒にいたい。って思う事でしょ?]

神崎は黙ったまま。

[間違ってる?]
私は聞いた…私にはそう思える人がいない。今までにも。
だから何かの本で知った…受け売りの言葉。

[合ってるよ。俺は作詞や作曲もするんだよ。だから愛については考えてる方だからな]

[もてるでしょ?]
私は聞いた。

神崎護…ウルフというバンドのヴォーカル。
身長も高く、ルックスもそれなりによい。
もてないはずはない。

[もてるよ]
さらりと言う。
[でもそれはバンドやってる時の俺なんだ。バンド辞めた俺は、俺じゃないらしい]

[辞めたらいいじゃない]
イヤならやらない…やるならやる。

[…愚痴だな。ごめん…こんな事を話すつもりじゃなかったんだ]

手に持っていた飲みきった缶コーヒーを取られ、神崎はゴミ箱へ捨てに行った。

神崎も妙子もパパも皆生きている。
父親も生きている。
私も生きている。

何で皆こんなに違うんだろう。

それぞれが何かの為に、生きている。

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