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第1章 目の前に立つのは…

『茶髪…、茶髪くん！？…』
綾香は信じられないというように語尾のトーンが上がり膝に力が入らなくなったかのように後退りドアへと寄りかかる程に驚いた。

『茶髪くんか、その呼び名高校以来で懐かしいよ……もっとも君しかそう呼ぶ人はいないけど……あの忌まわしい卒業式から君を憎んだ、忘れたいと思った……君はこの間見た駅前の彼と抱擁というラブシーン？初心な森部綾香という先輩は跡形もなく消え去ったというのか？』
中川は忌まわしい卒業式でも思い出すかのように綾香を見て顔をそらした。


あたしの卒業式、笑って卒業するはずのラストシーンは悲惨な結末…
思い出したくもない過去…


『会社に帰らなくちゃ』
綾香は忌まわしい過去の話を打ち切りたいがために後ろ手でドアノブを開けようとした。

『開かないよ、鍵を掛けた』
彼は一歩一歩彼女の前に近づいて口角を上げ逃げるのを先読みしていたかのよう。

『帰らなないと怒られます』
開かないと言われても駄目元で彼女はドアノブに力を入れた。

『先ほどのメンバーそれぞれが君を必要としていただろうか？私にはそうは見えなかったがね』
彼は嘘はついていないというふうにため息。


メンバーそれぞれがあたしを必要としていないと？そんなこと言われなくてもわかってる、、、、
だけど帰らなくちゃ余計怒られるに決まってる！

『やっと決まった仕事、もうクビになりたくないから会社に戻るのが正論だと、だからっ』

『がんじがらめで余裕すらない君はとても可哀想だと思うよ、簡単な質問にクリア出来たなら返してあげよう』
彼は綾香に手を差し伸べ立つように促したが彼女は動かないので苦笑する。、

『質問？』

中途採用のお茶くみ要員なんて成瀬コーポレーションには太刀打ち出来ないのをあざ笑うつもり？
相手がち茶髪くんでもあの頃の茶髪くんとは別人だもの太刀打ち出来ない。

『宮川春樹はどうした？君の彼氏とは違うが卒業式みたいに思わせぶりな顔してとっかえひっかえ？』
彼は笑っていない。

『それが質問なら答えたくありまぜん』

『…質問を変えよう、高校時代の彼氏の名前をフルネームで答えよ』


何を試そうというの？

『中川祐哉』

『リベンジなんて望んでいない、だけど君を憎んで仕返しをしたいだけ…玉子焼きから抜けない孤独から開放されたいだけ

玉子焼きから抜けない？
寂しい私生活？