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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第1章 夏の華
二人が騎乗し、外遊を始めても月城は無言のままだった。
月城は普段から寡黙だ。
余計なことは喋らない。
けれど決して陰気ではない。
黙っていても雰囲気が心地良い。
だから、暁は月城が寡黙でも少しも嫌ではなかった。
むしろ寡黙さが落ち着いた。

…だが、今の月城は違った。
ひたすら黙っている。
まるで、暁を拒否するかのように押し黙っている。
暁より少し先を洗練された物腰で騎乗しているのも、自分の存在を拒否しているようで腹が立った。

暁はとうとう我慢ならずに手綱を引き、ジークフリートと並んだ。
月城を見上げる。
氷の彫像のような横顔は端麗に整い、微塵の感情も感じさせない。
暁はやや硬い声で尋ねた。
「怒っているの?」
月城は前を向いたまま、静かに答えた。
「…怒ってなどおりません」
相変わらず感情のない声だ。
「嘘だ。君は怒っている。僕が春馬さんと話していたから?…別に大した話はしていない。春馬さんに子どもが生まれたから、おめでとう…て…」

暁の言葉を冷たい声が遮った。
「…暁様のお名前をお子様にお付けになったと言っておられました」
「…え…?」
ゆっくりと暁を振り向く。
冷ややかな眼差しが暁を見下ろす。
「…ご自分のお子様に暁様のお名前を付けられるくらいに、大紋様はまだ暁様に想いを残しておられるのですね…」
「…そんな…!」
そのまま、暁を置いてジークフリートを速足に走らせる。

月城の背中には暁を拒絶するような冷たい色が浮かんでいた。
不意に怒りが燃え滾る。
…何でちゃんと話を聞いてくれないのか。
…それとも、僕を信じてないのか。
言いたいことは溢れるが、言葉にならない。
また冷たい眼で見られたら…と思うと怖くて言えない。

暁は強く鐙を蹴り、猛然とアルフレッドを走らせた。
あっという間に前を行く月城を追いぬかす。
月城が慌てて声をかける。
「暁様!」
暁は振り返り、月城を睨みつける。
「うるさい!付いてくるな!」
アルフレッドは早駆けができて張り切っている。
見る見る内に月城を追いぬかし、小径を駆け抜けていった。
「お待ちください!暁様!」
ジークフリートの方が脚は速い。選りすぐりの競争馬の血筋だ。
暁は後ろを振り返りながら叫ぶ。
「付いてくるなってば!」
振り返った弾みに暁はバランスを崩した。
あっという間もなく、暁の身体は脇の草地に放り出された。


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