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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第1章 夏の華
か細い声を上げ果てた暁を、月城は崩れ落ちる前に抱きとめた。
壁には、月城が暁の体内に精を放った際に達したと思われる暁の花蜜が涙のように滴り落ちていた。
月城の精を悦んで享受する暁が、愛しくてならない。
月城は意識を手放した暁を抱き上げ、清潔な干し草が敷かれた床に自分のジャケットを敷き、横たえさせた。
上半身は乱されたまま、下半身は全て剥ぎ取られ黒い長ブーツだけ白くほっそりとした長い脚に履いているのが、眩暈がするほど倒錯的で淫らな光景だった。
意識なく投げ出された白い脚の間からは、月城が放った牡液がしとどに流れ、白い太腿と脹脛に伝い滴り落ちている。

…暁様は、意識を無くされている時ですら淫らで美しい…。
月城はその余りに淫蕩な無意識の媚態に暫し見惚れる。

…本当は心配でならない。
暁が月城の知らないところで危険な目に遭わないか、恋の誘惑はないのか。
…大紋は、本当にもう暁に手を出さないのか…。
先ほど、暁が大紋と話している様子が眼に入った途端、月城は今迄感じたことがないほど、全身の血が燃え滾るような妬心に襲われた。
生まれた子どもに暁の名を名付けるなど、明らかに彼はまだ暁に未練を持っているはずだ。
暁は…
一途な健気な性格だ。
大紋のことはもう想いを残してはいないだろう。
月城をひたすら愛してくれていることは良く解る。
けれど、つい疑心暗鬼になってしまうのだ。

…この美しくも儚く妖しい青年がいつか自分の元を去ってしまうような気がして…。

…恋とは厄介なものだ。
自分であって自分でなくなる…。
こんな気持ちは、初めてだった。

梨央のことは、お伽話の姫君を恋い慕うようなプラトニックな気持ちだった。
だから、梨央が他の人を選んでも、寂しい気持ちにはなったが、焼け付くような嫉妬心を感じたことはなかった。
梨央が幸せならそれで構わなかった。

…だが、暁は…。

暁が瞼を震わせ、目覚めようとしている。
「…暁様…」

…私は、暁様を決して離さない…。

「…月城…」
夢を見るような眼差しの暁に、月城は優しく微笑みかける。

「…お目覚めになりましたか?」
…私は貴方を生涯離さない。
二人が離れることがあるとすればそれは…

月城は暁に手を差し伸べ、抱き締める。
「愛しています、暁様」

…それは、二人が死ぬ時だ…。

月城は、暁に甘い甘いくちづけを送った。
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