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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第1章 夏の華
昨日は結局、外遊もできずに終わってしまった。
馬丁小屋の外に、利口に戻ってきていたアルフレッドとジークフリートに暁は、恥ずかしそうに二頭の鼻面を撫でながら
「…ごめんね…」
と詫びた。
そんな暁がいじらしく、月城はまた唇を奪わずにはいられない。
暁はキスは素直に受けたが、拗ねたように紅い貌で月城を睨んだ。
「もう…君のせいだ…」
「…はい、申し訳ありません」
「君とゆっくり馬に乗りたかったのに…」
「はい」
「…君と過ごせる時間は貴重なのに…」
「…はい。反省しています」
その間中も暁の髪や唇を愛撫するものだから、
「本当に反省しているの?」
と、むくれる暁であった。

月城はそんな暁が愛おしくてならない。
強く抱きしめ、耳元で囁く。
「反省しています。申し訳ありません。…けれど、私は暁様といると貴方を求めずにはいられないのです。…貴方の全てを奪わずにはいられない。…魅惑的な貴方のせいです」
「…そんな…!…んんっ…!」
愛の言葉は濃厚なくちづけに取って代わる。
暁は最後はもはや抗議する気も失せ、月城の巧みなくちづけに酔いしれたのだった…。

…昨夜はさすがに何もせず、暁のベッドで二人寄り添って眠った。
暁は月城と添い寝するだけで嬉しそうだった。
子どものように何度も貌を見上げ、恥ずかしそうに笑う。
そんな暁の髪を優しく撫で、綺麗な額にキスを落とす。

「…来週は北白川家の夜会で、君に会えるね…」
月城の胸の中で嬉しそうに呟く。

来週は北白川伯爵の帰国祝いの夜会が開かれるのだ。
礼也と共に暁ももちろん招待されている。
「そうですね…旦那様のご帰国は約1年ぶりですので、盛大なものになるでしょう」
北白川伯爵は大変に華やかで魅力的な人物だ。
社交界でも頗る人気が高く、夜会の招待状の人選には苦労した。
招待して貰いたがる人は数限りなくいるが、全てを招待する訳にはいかない。
ロンドンの伯爵と従者の狭霧とも相談を重ね、慎重に人選をしたのだ。

「…この夏は、伯爵がご帰国されるから…君は忙しいよね…?」
ぽつりと、やや淋しげな声が響いた。
…会えなくなるのを心配しているのだろうか。

月城は、暁を優しく抱きしめ
「確かに旦那様のお供で多忙にはなりますが、暁様との時間は何より大切にいたします」
優しく囁いた。
暁は、ふっと笑いそのまま月城に抱きつき眠りに就いたのだ。



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