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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第1章 夏の華
月城が一階のホールに向っていると、何やら玄関が賑わっている。
不審に思い、近づいてみると華やかな雰囲気を纏った1人の従者が下僕と軽口を叩きながら中に入るところだった。
月城は眼鏡の奥の眼を見開いた。
「…狭霧さん!」

北白川伯爵付きの従者、狭霧は月城を見ると、その華やかな艶めいた貌で微笑んだ。
「やあ、月城くん。久しぶりだね」

…約1年ぶりだというのに、先月会ったばかりのような気楽なもの言いに、月城は相変わらずだなと小さく笑う。
狭霧は月城の前まで歩いて来ると、朗らかな声で告げた。
「旦那様と今朝、横浜港に着いたよ。予定より1日早い到着だな」
狭霧の絹のようなしなやかな雰囲気は話しているだけで、人を寛げさせる。
「お嬢様方が喜ばれます」
「…旦那様は火急のご用で御所に参内されたよ。ご用が済み次第、こちらにお帰りになるだろう。…私は荷物の点検があるから、先に帰って来た」
「手伝います」
「ありがとう、助かるよ」
狭霧は艶めいた目元で微笑った。

…狭霧といると、月城は執事見習いだった18の自分に戻るかのような錯覚を覚える。
そして、どことなく気持ちが落ち着かなくなる自分もいる。
狭霧がふと、月城の顎に手を掛け、自分の方に向けさせる。
「…月城くん。…君、変わったね…」
ひんやりとした伽羅めいた薫りが狭霧からは漂った。
「…え?」
狭霧の甘やかな二重の眼差しが笑いかける。
「…恋をしているね。…しかも飛び切り激しく、情熱的な…」
「…狭霧さん…」
占い師のように言い当てられ、月城は動揺する。
「…へえ…。氷の美貌の執事と言われた君がねえ…。
今年一番のビッグニュースだな」
弟の恋を喜ぶような狭霧に、月城は慌てて言い返す。
「狭霧さん!揶揄わないでください」
狭霧は優しく月城の肩を抱きながら、貌を寄せる。
「いいじゃないか。…梨央様への清らかな初恋をようやく卒業し、今度は本物の大人の恋だ。…私は嬉しいよ」

…そして、くちづけするような距離まで貌を近づけ
「…かつて私が手解きしたことは無駄ではなかったようだね…」
と甘く囁いた。
「…狭霧さん…」
月城の胸が疼く。
…狭霧と過ごした麻薬のように甘やかな夏の一夜が過る。
狭霧もあの一夜を思い出したのか、彼の琥珀色の瞳がやや淫蕩な色を帯び、微笑った。

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