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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第1章 夏の華
温かい吐息ごと、唇を奪う。
柔らかな子どものようないたいけな唇…。
重ねるだけのつもりだったのに、月城の眠っていた劣情に火が点く。
無防備に開かれる唇を荒々しく食み、白い歯列を舌先でこじ開ける。

「…ん…っ…あ…あ…」
掠れた甘い喘ぎ声が微かに漏れる。
眠りが深い暁はまだ、半ば夢の中だ。
眠り姫のような佳人の唇を貪っていると、月城の中の獣性がじわりと目覚め、気がつくと暁の貌を両手で挟み、荒々しくその柔らかな口内を蹂躙していた。

「…あ…っ…つきしろ…」
漸く意識が覚醒した暁が、うっすらと瞼を開け、月城を見つめる。
「…おはようございます。暁様」
唇を開放してやり、唾液で濡れた唇を親指で拭ってやる。
暁はその儚げな美貌にうっすらと笑みを浮かべる。
「…おはよう、月城。…お帰り…」
ほっそりとした白い腕を差し伸べる。
そうして、月城の首筋に腕を絡め、自分の方へと引き寄せる。
「お寝みの中、起こしてしまい申し訳ありません…」
やや寝乱れた前髪を優しく直してやる。
暁は目を細めたまま、首を振る。
「…早く君に会えて嬉しい…。今日はずっと一緒にいられる?」
「はい。ずっとお側におります…」
「嬉しい…」
暁は子どものように、月城の首筋に貌を埋めた。
「…君の匂いがする…」
うっとりとしたような声…。
「どのような匂いですか?」
…自分の匂いは案外に分からないものだ。
「水仙みたいないい匂いだ…。君の匂いを嗅ぐと安心する…」
母親に甘える子どものように、暁は月城の胸に貌を埋めてしまった。
月城は添い寝してやりながら、暁の背中を優しく撫でる。
「…私は自宅に戻ります。暁様は今しばらくお寝み下さい」
…朝食の支度が整いましたら、お呼びいたします。
と、言った月城に拗ねたように首を振る。
「嫌だ。…一緒に寝て?…」
無邪気に甘える暁に、月城は少々意地悪く微笑った。
「一緒に寝るのは構わないのですが…恐らく、暁様を寝かせて差し上げることが出来ないのです…」
「…え?」
不思議そうな貌をする暁の白く華奢な手を掴むと、月城は己れの熱く硬く兆している牡の像をスラックス越しになぞらせる。
「…あ…」
暁が息を呑み、白い頬を薔薇色に染める。
「…私はやはり自宅に戻ります」
暁の手が月城を強く引き留める。
「行くな…」
そして…
「…僕だって…したい…」
と恥じらうように呟いたのだ。




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