この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第1章 夏の華
ワインセラー室から出てきた月城と暁を見て、礼也は眉を顰める。

廊下には、突然現れた容姿端麗で高貴な男爵に、恐れ多く…だが興味深々と遠巻きに見ている下僕やメイドがいた。

月城は礼也に頭を下げる。
「…月城…」
月城の背後に隠れるように身を潜めている暁を見つけ、礼也は月城を睨む。
そして、月城の後ろの暁に優しく話しかける。
「暁…。こんなところにいたのか。探したよ。…さあ、帰るぞ」
「…兄さん…」
礼也は月城に一歩近づき、やや小声で…しかし強い口調で問いただす。
「月城、暁を階下に呼び出すのは止めてくれないか。…暁にも立場がある」
暁は目を見張り、慌てて首を振る。
「違うんです!兄さん、僕が勝手に来たのです。…月城は悪く…」
「申し訳ありません。私が、暁様をお呼び立ていたしました。…ワインについてお伺いしたいことがありましたので…」
反論する暁を遮り、礼也に頭を下げる。
「…月城!なぜそんな…!」
声を上げる暁に
「大変ご迷惑をおかけいたしました。…暁様。
…どうぞ、縣様とご一緒にお帰りください」
頭を下げ、一言の反論も許さない態度を崩さなかった。
「…月城…」
なす術もなく立ち尽くす暁の肩を礼也は優しく抱く。
「さあ、帰ろう。光さんが車でお待ちだ。…今日はもう遅い。このまま松濤の家に泊まりなさい。
明日は一緒に出勤しよう」
「…兄さん…でも…」
礼也はやや強引に暁の手を引き、階段へと導く。
「…おいで、暁」
諦めた暁は礼也に付き従う。
廊下のメイド達は膝を折り、通り過ぎる二人にお辞儀をする。
階段を登りながら、暁は月城を振り返る。
…月城の眼鏡の奥の怜悧な眼差しからは、何ひとつ感情が読み取れなかった。
暁は溜め息を吐くと、兄に肩を抱かれながら階上へと消えていった。

思わぬ高貴な人々の来訪に、使用人達は暫し騒めいていたが、家政婦の彌生により、それぞれの持ち場に散っていった。

「…これは強力な小姑だな。縣様がここまで暁様を溺愛しておられるとは知らなかったよ」
いつの間にか近くに忍び寄っていた狭霧が、月城の耳元で囁く。
月城は表情を変えずに
「…仕方ありません。…暁様は縣様の掌中の珠のような存在でいらっしゃるのですから…」
そう言うと、静かに執務室に戻っていったのだった。

…暁様は、何を仰りたかったのだろうか…。
月城はそれだけが気がかりであったのだ。


/954ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ