この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第1章 夏の華
「兄さん!」
礼也は暁に近づくとその腕を取り、柵から…月城から引き離そうとした。
「まだお前を家に帰す訳にはいかないよ、暁」
「なぜですか?兄さん!…先日の一件は僕が勝手にしたことなのです。月城は何も悪くないのです」
「…そうかもしれない。…だが問題は、お前と月城の恋愛が困難そうなことだ。…立場の違い、すれ違いの生活、真実を打ち明けることが出来ない恋…。…そんな恋が長続きするのかね?」
暁は必死で兄に縋る。
「…兄さん!僕は月城といて幸せです。…確かに、逢える時間は僅かです。…だからつい、階下に降りて月城に逢いに行ってしまいました。…でもこれからは気をつけます。月城にも、兄さんにも絶対に迷惑を掛けません!お願いだから、僕を家に帰して下さい」
「…暁…」
可愛い弟に涙を流し懇願され、礼也はさすがにそれ以上言えなくなってしまった。
柵の外の月城が静かに口を開く。
「…縣様…私が至らなかった点は心よりお詫びいたします。暁様にお寂しい思いをさせてしまったことも、申し訳なく思います。これからはそのようなことがないよう、充分気をつけてまいります。
…縣様、私は暁様を心から愛しております。暁様とお目にかかれないなら、生きている甲斐がないと思うほどに…。どうか、暁様を私に返して下さいますよう、お願いいたします」
月城は猛然と頭を下げた。
「月城…。僕だってそうだ。君がいないと息も出来ない程に苦しい!世界が色褪せて見える…愛しているよ…心から…」
柵越しの月城に縋り付かんばかりの暁に、礼也は溜息を吐く。

そして暁の肩を抱くと穏やかに言った。
「…帰る支度をしなさい。うちの車で送ろう…」
暁は礼也を見つめて微笑んだ。
「…ありがとう、兄さん!…でも、大丈夫。月城と歩いて帰るから…」
礼也が目を見張る。
「麻布十番までかなりあるぞ?」
「その分だけ、月城といられる…」
暁は月城を見上げ、嬉しそうに笑った。
「…暁様…」
月城の眼鏡の奥の瞳が輝いた。

礼也はわざと呆れ果てたように肩を竦めた。
「…好きにしなさい。全く…大人しそうに見えて、お前は一度言い出したら聞かないからな…。
…月城…暁に悲しい思いをさせないように…愛してやってくれ」
「…縣様!」
深々と頭を下げる月城を見た後に、暁の髪をくしゃくしゃと掻き回し、礼也は少し寂し気に屋敷へと戻っていったのだった。




/954ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ