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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第4章 ハニームーン・ペーパームーン 〜蜜・月・旅・行〜
宿に帰り、二人は着物のまま縁側に並んで座り、黙って月を見上げていた。
…今宵は満月…。
まるで蜂蜜を溶かしたような甘やかな綺麗な月だ。

暁はふと、先ほどの秋祭りに想いを馳せ、月城の肩に頭をもたせながら呟く。
「…綺麗だったね…。御神楽…」
月城が暁を見下ろし、優しく手を握る。


…身繕いを終えると暗闇に紛れてそっと手をつなぎ、神社の鳥居を潜った。
神社の舞台では御神楽が始まろうとしていた。
「…御神楽?見たことない…」
子どものように目を輝かせる暁の手を強く握る。
「…では観に行きましょう」
暁は嬉しそうに月城を見上げる。

御神楽が催されるのは、薪能も行なわれるという歴史ある立派な神楽舞台だった。
大勢の見物客の中、二人は寄り添いながら興味深げに舞台を眺める。

松明が赤々と燃え、雅楽の演奏が厳かに始まった。
西洋の音楽は14歳から礼也の指導のもと、かなり熱心に聴いたり勉強したりしたが、日本の雅楽は初めて体験する世界だった。
…鳳笙、龍笛、しちりきが典雅な音楽を奏で、白装束の巫女が神楽鈴を涼やかに鳴らしながらゆっくりと舞い始めた。
「…御神楽は元々、神の祭事であり宮中の儀式だったのですが、このように一般の神社で舞われるものを里神楽というのだそうです。五穀豊穣を願い、収穫を喜ぶ秋祭りに相応しい祭事ですね」
月城が分かりやすく説明をしてくれた。
暁は舞台と巫女と音楽が織りなす美しさにうっとりとする。
「…本当に綺麗な舞いだね…。松明の灯りに照らされて…とても幻想的だ…。雅楽って初めて聞いたけれど、心の琴線に触れる素敵な音楽だね…。
…まるでかぐや姫が月へと帰っていきそうな…そんな切ない音色だ…」

…かぐや姫…。
月城はふと、暁を見つめた。
松明の灯りに照らされた暁の白い貌はぞっとするほどに凄絶な美しさであった。
…正にこの世のものとは思えないような、浮世離れした人外な美貌…。

月城は、暁がかぐや姫でこのまま月に消えてゆくのではないかとの妄想に取り憑かれ…その恐怖から握り締めた暁の指を強く絡めた。
暁が月城を見上げ、恥じらうように微笑んだ。
月城は黙って暁を見つめ返した。

…このまま、二人だけの世界になればいい…。
子どもじみた願いを胸の中で繰り返す。

…雅楽の雅やかな…そしてどこかもの哀しい響きを聴きながら月城は、愛おしいひとを見つめ続けた。




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