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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第4章 ハニームーン・ペーパームーン 〜蜜・月・旅・行〜
…御神楽がお開きになると、見物客は散り散りになる。
また元の賑やかな祭りの雰囲気が戻ってきた。
陽気なお囃子の中、子どもたちが走り回る様子を楽しげに眺めながら暁が月城を見上げて微笑んだ。
「…月城、お参りしよう」

拝殿に進み、二人は並んで参拝をした。
月城が祈り終わり、暁を見下ろすと彼はまだ熱心に手を合わせ、祈祷を続けていた。
…何を祈っているのだろうか…。
美しい横顔に見惚れていると、暁が長い睫毛を震わせ瞼を開いた。
月城と目が合い、少し恥ずかしそうに微笑う。
「何を祈っていらしたのですか?」
参道を戻りながら尋ねる。
「…皆が幸せに暮らせますように…て。…それから…」
「それから…?」
射干玉の色をしたしっとりと潤んだ瞳が月城を見つめる。
「…君とずっとずっと一緒にいられますように…て。ずっとずっと離れずにいられますように…て」
月城の胸は暁への愛おしさで一杯になる。
「…暁様…」
暁の手を人目も憚らず、強く握り締める。
「…私もです。…私も、貴方と未来永劫共に生きられますようにと、祈りました」
「…月城…」
暁の美しい瞳が潤む。
この切ないまでに愛おしい想いをすぐには言葉にできないから、男のひんやりとした美しい手を取り愛しげに頬ずりをする。
震える声が小さく告げる。
「…愛してる…月城…」


…夢のような時間を反芻するように、暁は月を見上げながらゆっくりと口を開く。
「…楽しかったな…。この二日間…。寝ても覚めても君がいて…一日中君の体温を肌で感じられた…」
今も隣で自分に寄り添う男の温もりを確かめるように、身体を寄せる。
力強い腕が暁を抱きしめる。

「…暁様…」
…自分は欲望のままに暁を抱くことしかしなかったのに、健気な言葉を漏らす暁に苦しいほどの愛が溢れ出す。
「…私もです。愛する貴方を私だけが独占できた。…この美しく可愛らしい貴方を私だけが…」
堪らずに暁の花のような唇を求めずにはいられない。
暁も月城の情熱的なくちづけにしなやかに応える。
甘やかな吐息を漏らしながら唇を離す。
暁が月城に頬を寄せたまま、呟いた。
「…帰りたくないな…。
ずっとこのまま、君といたい…。もう…君と離れたくない…」
我儘など一度も言ったことがない暁が漏らした切ない願いに、月城は胸を突かれ言葉を失くした。



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