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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第1章 夏の華
「…そのような私が暁様のお側にいて、果たしてそれが暁様の為になることなのか…と、考えておりました。
…私は他家の執事です。暁様とは逢える時間も場所も限られております。…今でも暁様にお寂しい思いをさせてしまっているのに、私にはそれをどうすることもできないのです。…本当はずっと暁様のお側にいたい。…けれど、私達の恋は秘密にしなくてはならない。決して知られてはならない。暁様の将来の為に、あの方の人生を傷つけるものに、私は決してなってはならないからです…」
一息に話した月城に、大紋はしみじみと口を開く。
「…羨ましいよ、君が」
月城は端正な眉を顰め、大紋を見る。
「…羨ましい…?」
大紋はやや苦しげに答える。
「ああ、羨ましい。…暁のことを考えてやれる君が羨ましい。…僕は暁を案じることすら、許されない。
…いや、羨ましいのは、暁に愛されている君だ」
「…大紋様…」
「君は暁に愛されている。…それだけで充分に幸せなのに、何を贅沢な心配をしているんだ」
腹立たしげにため息を吐く。
「…暁が身分や地位で君を選んだのか?…違うだろう?暁はありのままの君に恋をして、愛したんだ。身分も地位も…そんなものを彼は気にしちゃいない。すれ違いの生活だって、暁はきっと我慢をする。…君を愛しているからだ。
色んな問題があっても、きっと暁は君を愛し続ける。
なぜかって?…君を愛しているからだ。
…愛は全てに打ち勝つのさ。…て、何で僕が君にこんなことを教えてやらなきゃならないんだ。…馬鹿馬鹿しい」
「…大紋様…」
大紋は打って変わって、優しい眼差しで月城を見た。
「…自信を持ちたまえ、氷の美貌の執事くん。…君は眩しいほどに美しいし、賢いし、威厳と気品に満ち溢れた素晴らしい執事だ。…暁にお似合いの恋人だよ。
…これは私が保証する。
…それに…」
大紋は遠くを見つめ、葉巻をくゆらせる。
「…世界は今、凄まじい勢いで変わろうとしている。…日本もそうだ。身分違いなどという旧態依然の考え方もいつかは消えて無くなるだろう…」
…だからそんなものに囚われる必要はないのだと、優しい兄のような口調で言い添えた。
月城は、感謝の気持ちで一杯になる。
それを口にしようとした時に大紋はふっと笑い、やや意地悪く付け加えた。
「…けれど、僕がまだ暁を愛していることは忘れないでいてくれたまえ」
「…え…?」
月城は目を見張る。

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