この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第1章 夏の華
月城は、九条子爵のお茶会から帰宅するとすぐ様に従者の狭霧を訪ねた。
狭霧は、階下の作業室で伯爵の靴の手入れをしていた。
ワイシャツの腕を捲り上げ、生成りのエプロンを付け、器用に作業する狭霧は、パリの洒落た職人のような絵になる姿であった。

「狭霧さん…」
狭霧は靴にブラシをかける手を止め、月城を振り返りその艶めかしい琥珀色の瞳で笑った。
「やあ、お帰り。…お茶会はどうだったかい?」
「はい、大盛況でした。旦那様は相変わらず色々なお方から引っ張り凧でした」

…旦那様が帰国中はなるべく君が旦那様のお付きとして、外出したほうがいい。
良い経験をたくさん積めるし、色々な人間関係を肌で知ることが出来るチャンスだ。
そう言って、狭霧は月城に伯爵のお付きの仕事をさり気なく譲ってくれる。
梨央のお付きだけでは見聞することが出来ない様々な会や場所に行かせることで、月城の執事としての経験値を上げようとする狭霧の深い愛情から出た行為だ。

月城は表情を引き締め、丁重に狭霧に話しかけた。
「…狭霧さん…。実は、お願いがあります」
狭霧は綺麗な瞳を見開き、月城を見た。
「どうした?…君がそんなことを言うのは初めてじゃないか」
「…はい。…一生のお願いです。日曜日の宮中参拝の仕事を、代わってはいただけないでしょうか?」
狭霧は月城を驚いたように見つめ、首を傾げる。
「…あんなに感激していたのに…?何かあった?」
月城はひとつ大きく息を吐くと、口を開いた。
「…その日、私はどうしても暁様と過ごしたいのです」
「縣の弟君と…?一体どうして?」

…月城は大川の花火大会のあらましを話した。
暁の子ども時代に唯一楽しかった想い出を、もう一度自分と共に味わせてあげたいこと、我慢ばかりしている暁に思う存分甘やかせてあげたいこと…。

…折角、狭霧が自分の為に譲ってくれたお役目なのに、とても申し訳なく思っていること。
これは完全に自分の我儘なので、幾らでもその罰則や責めは受けるつもりでいることなどを、誠意を込めて話したのだ。

黙って話を聞いていた狭霧は、月城の前にゆっくりと進むと、その華やかに整った貌に温かい笑みを浮かべた。
「…君の恋愛偏差値も、漸く人並みになってきたね…」
/954ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ