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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第6章 いつか、愛を囁いて
「…貴方が嫌いだという訳ではありません。
貴方のように生れながら恵まれた環境にいらして、何不自由なく豊かにお育ちになった方は私とは全く違う世界にいらっしゃるような気がして…理解出来ないような気持ちがしたのです。
…けれど…」
泉が優しく微笑みかける。
「…今は貴方が一途で繊細で…とても純粋な方だとよく分かりました」
司の首筋が朱に染まる。
それを見られたくなくて、司は慌てて立ち上がる。
「…そんな…買いかぶりだよ…僕なんて…単細胞の馬鹿で…真紀を追いかけて日本まで来ちゃって…捨てられて…本当にただの考えなしの大馬鹿だ…」
再び自己嫌悪が襲い、司は暗く独り言ちる。
「…パリに帰ろうかな…」
「…え?」
鮮やかな色の蘭に触れる。
…綺麗だな…どこの国の花なのかな…。
「…僕は真紀に逢うために日本に来たんだ。…真紀に振られたらもう日本にいる意味はないからね…。
…瑠璃子やお父様やお母様に会いたいし…。
年が明けたらお父様に連絡して…」
…パリに戻って大学に復学しよう。
あちらには幼馴染みも沢山いるし、何より育った国だ。
同性愛者の僕には住みやすい国だし…。


「…帰らないで下さい」
「…え?」
振り返ると、思わぬ近さで泉が佇んでいた。
「…貴方に帰られると困ります」
「どうして?」
見上げる瞳に泉の澄んだ瞳が、強い意志を帯びた表情で司を見つめる。
「…私は貴方にお仕えするように奥様に命じられました。大学にも通われずに途中で帰国されたら、私の職務怠慢になります」
「ならないさ、そんなの」
「貴方にはもっと日本を知っていただきたい。日本の良さや素晴らしいところを勉強していただきたいのです」
司は肩を竦める。
「真面目だなあ…」
…なんだ…そういう意味か…。
司は少しがっかりする。

「…それに…」
躊躇いつつも泉がはっきりと告げる。
「貴方が帰国されると、私が寂しいです」
「…え?」
「帰らないで下さい…」
「…泉…」
泉の温かな手が司の手を握りしめる。
「…ここにいて下さい…」
「…どういう意味…?」
おずおずと尋ねる。
不意に泉の凛々しい貌が、少年のように紅潮する。
「…そのままの意味です。貴方が好きだからです」
司は息が止まるほど驚く。
「…ちょっと…反則だよ。そんなストレートに…」
胸の鼓動が止まらない。
…頭の中が真っ白になって、それ以上言葉にならない。




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