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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第10章 初月の夜も貴方と
「…暁様。私を見てください…」
静かなよく通る声が聞こえた。
暁は恐る恐る貌を上げた。
思わぬ近さで月城の眼鏡越しの端正な眼差しと眼が合う。
その眼は包み込むように…そして情熱的に暁を見つめていた。
「…確かに私は暁様のこの玻璃のように繊細で優美なお貌が好きです。
けれど私は例え貴方のこのお貌に皺ができても、それを愛おしく思うでしょう…」
「…月城…」
「…この綺麗な髪に白いものが混ざっても、それを何より美しく感じるでしょう。…なぜなら、私は貴方が貴方だから好きなのです。私は貴方と共に歳を重ねてゆくことを楽しみにしているのですよ。
…ですからそんな取り越し苦労はやめてください」
「…月城…」

嬉しい涙に曇って、愛しい男の貌がよく見えない。
…やっぱり月城は僕が一番欲しい言葉をすぐにくれるのだ…。
「…もう…新年早々僕を泣かせてどうするつもりだ」
照れ臭くて、泣き笑いしながら答える。
…けれど、愛おしい男の瞳を見ながらしっかりと告げる。
「…ありがとう。月城…。…愛しているよ…」
「私もです。暁様…」
どちらからともなく貌が寄せられ、そっと唇が合わさる。

二人は暫く愛に満ちた眼差しで見つめ合っていたが、やがて月城は朗らかに笑った。
「さあ、冷めない内にいただきましょう。暁様のお雑煮に、いとさんのお節…豪華な元旦のご馳走ですね」
目尻の涙を拭い、暁も幸せそうに笑う。
「…君の作った車海老の天婦羅もだ…」
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