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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第10章 初月の夜も貴方と
…分けても素晴らしいのはその身体だった。
ほっそりとした強く抱けば砕けそうな華奢な肢体だが、閨に入ると、その身体は妖しい陰花植物のように淫らに咲き初めるのだ。
その肌は降り積もる白雪より白く、あえかな異国の花の薫りがする。
少しでも強く掴むと紅い花のような跡が付いてしまう儚さだが、月城の求めに応じて、しなやかに応え、艶やかな媚態を示すのだ。
普段は慎み深い気品に満ちた美しい青年が月城の腕の中だけで、淫らに痴態を露わにする…。
それは暁の天性の魔性の魅力ともいうべきものなのだが、恥じらいつつも月城の濃厚な愛撫に素直に反応して見せ、月城のややエキセントリックな性技の求めにも従順に従う。
…僕は月城を愛しているから…と熱っぽい口調で訴える。
どれだけ、月城を愛しているかをかき口説く暁は愛おしい。
しかし、月城は自分の方がより暁を愛していると思う。
表情が読み取りにくい冷たい容貌のせいで、暁に自分の愛が伝わっているのか不安になることがある。
だから、誰にも邪魔をされない二人きりの閨ではつい暁を執拗に求めたり、暁の自分にしか見せない淫らな痴態を見たいと思ってしまうのだ。
…それがエスカレートして今日のように暁を泣かせてしまうこともある。
月城はその都度反省するのだが、暁が色っぽすぎるのがいけないのだと自分を正当化する。

「…申し訳ありません…暁様…」
月城はまだ汗ばむ暁の髪を梳き上げる。
「…あ…」
暁の瞼が震え、ゆっくりと瞳が開かれる。
「…暁様、気がつかれましたか…?」
ぼんやりとした漆黒の闇色の瞳が月城を見上げる。
…幼子のように無垢な笑みが広がる。
「…月城…」

しかしすぐにはっと慌てたように着物の襟をかき合わせ、己れの姿を見下ろした。
「…これ…着物…」
…藤色の着物は既に脱がされ、白い寝間着の着物に着替えさせられていた。
「君が誂えてくれた着物は…?」
月城は艶やかな頬を撫でてやりながらそっと微笑む。
「…貴方と私の精ですっかり濡れてしまいましたから、お着替えしていただきました」
暁は首筋を桜色に染め、項垂れる。
「…だから嫌だって言ったのに…」
薄紅色の唇を噛みしめる暁は心臓を鷲掴みにされるほど可憐でいじらしかった。
「…君が僕の為に選んでくれた着物なのに…」
「…申し訳ありません…」
そのまま強く抱きしめる。
…離したくない…唯一無二のひと…。
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