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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第10章 初月の夜も貴方と
…いつからだろうか…。
月城は腕の中で眠る暁の美しい横顔を見つめながら思いを馳せる。
年々、暁への思いが熱く切なくもどかしいほどに昂まる自分を感じるのだ。

自分は色恋や色欲には淡白だと思っていた。
初恋は純粋培養で育てられた手に触れることも許されないような高嶺の花のひとだったから、最後まで美しい憧憬で終わった恋だった。
男色の手解きをしてくれた従者狭霧は、甘く切ない想い出のひとだ。
光は美しく艶めいたひと夏の想い出をくれたひとだ。
…他に、一夜限りの恋なら数え切れないほどした。
しかし相手が自分に嵌る前に身を引いた。
身を引いても少しも後ろ髪を引かれることはなかった。
恋は月城にとって少しの間、楽しむ洋服やアクセサリーのようなものだった。
1日…いや、その瞬間楽しめたら満足し、さっさと脱ぎ捨て…或いは外すもの…。
冷たい言い方をすれば、相手が月城の視野の中で見る見る間に色褪せてゆくのが判り、離れていったのだった。
勿論、執着心など持ったことは一度もなかった。

しかし…暁と恋に堕ち、その気持ちはがらりと変えられた。
暁を知れば知るほど…抱けば抱くほど深みに嵌る自分を知った。
…暁は決して自分から多くを語りはしないし、魅力を誇示する訳ではない。
暁を溺愛する兄、礼也の庇護下にいる時から控えめでひっそりと暗闇に咲く白い花のような…しかし月城を見つめる時はその潤んだ瞳に精一杯の健気な微笑みを浮かべる…そんな青年だった。

…暁を初めて抱いた日からもう既に13年の月日が経とうとしていた…。
しかし月城は、一度たりとも暁に対して飽きたことはない。
寧ろ暁の心と身体の執着は強くなっている。

暁は自分の容姿の衰えで、月城の気持ちが冷めることを案じていたが、思わず笑ってしまうほどに杞憂な心配だ。

…暁の美貌は十代の頃から少しも変わらず…いや、三十代半ばを迎えた今、その容貌は円熟味を増し、更に美しく内側から光が映えるような輝きを放っていた。
白い肌は真珠のようにしっとりとした照りを帯び、その美しい眼差しは常に艶を含み、形の良い鼻、薔薇色の唇…と暁の容姿はため息が出るほどの麗しさに満ちているのだ。









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