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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第12章 その愛の淵までも…
「…本当にお姉様のようなじゃじゃ馬がよくお嫁にいけたものだわ」
「礼也さんは私のじゃじゃ馬ぶりを何より愛してくださっているのよ。お生憎様」
他愛のない姉妹の言い争いに小さく笑みを浮かべ、暁はティースプーンを取ろうと手を伸ばし…うっかり床に落としてしまった。
下僕を呼ぼうとした瞬間、暁の足元に素早く跪いた者がいた。
ひとりの若い下僕がスプーンを拾い、暁を見上げ微笑んだ。
「今、新しいものをお持ちいたします」

…先ほど温室で暁を見つめていた藍染という名の下僕であった。
今もまた真っ直ぐな瞳で見つめられ、暁はややたじろく。
「…ありがとう。すまないね」
礼を言われ、藍染は晴れやかな笑顔を浮かべた。
端正な美男子なので、印象が途端に華やかに変わる。
「いいえ。暁様。とんでもございません」
暁は大きな瞳を見開いた。
「…君、僕の名前を…?」
「はい。先ほど深津さんに伺って覚えました。
…あかつきの暁様…。とても綺麗なお名前ですから…。
…お美しい貴方様にぴったりな…」
熱を帯びた眼差しと口調は暁をどきりとさせるのに充分なものであった。
「…それは…どうもありがとう」
困惑したように眼を伏せる暁の背後から、低い美声が響いた。
「…藍染。早く暁様に新しいスプーンをお持ちしなさい」
月城が研ぎ澄まされた氷の彫像のような表情で藍染を見下ろしていた。
藍染は素早く立ち上がり、一礼すると客間を後にした。
「…月城…」
「新入りの下僕が失礼いたしました。
…暁様。何か不都合はございませんでしたでしょうか?」
やや硬い口調で尋ねるのを、暁は柔らかく微笑み返した。
「大丈夫だ。何も問題はないよ。月城」
月城を安心させるような笑顔に、男はやや表情を和らげる。
「…承知いたしました」
美しい所作で去ろうとする月城の指に誰にも見えないように一瞬だけ、指を絡める。
月城が意を汲んでその指を強く握り返し、そのまま何事もなかったかのように去って行った。

「相変わらず仲睦まじいこと…」
綾香が妖艶な眼差しでそっとウィンクを送る。
卓上に飾られている薄紅色の薔薇よりも艶やかに暁は頬を染めた。



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