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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第12章 その愛の淵までも…
藍染はサロン内の紳士方にはブランデーを、婦人方には林檎酒を配り終えると、壁際に立ち、そっと窓辺の暁を見つめた。

…美しいひとだ…。
陽の光に包まれ、優雅にソファに腰掛けるその姿はまるで一枚の緻密な古典絵画のようだった。

…もっとあのひとに近づきたい…。
身体の中から突き上げるマグマのような欲望に、身体を震わせる。
思わず…かのひとに惹き寄せられるように一歩、歩み出たその時…。

…彼の元にしなやかに歩み寄る人影があった。
藍染の端正な眉根が寄せられる。

…この屋敷の執事であり…彼の伴侶であるという月城だった。

長身の西洋人のようなスタイルをした精巧だが冷たい彫像の容貌の彼は、美しい暁にまるで当然というかのように近づく。
…途端に、暁の表情が太陽に照らされたかのように光り輝いた。
白磁のように滑らかな頬が桜色に染まる。
控えめな動作で、傍らに立つ男を見上げる。
月城が何か囁いた。
暁は遠目で見ても長く濃い睫毛を震わせて、嬉しそうに笑った。
寂しげな夜の白い花が一気に咲き染めたような可憐な笑みであった。
…藍染の胸の内がちりちりと焦げ付くように痛んだ。

…その時…サロンの扉が開き、真紅の薔薇のような色合いのシフォンタフタの細身のドレスを身に纏った綾香と、その三歩後ろを真珠色の清楚なシルクのドレス姿の梨央が現れた。

二人はまるで永遠の恋人のように仲睦まじく手を繋ぎ、優雅にお辞儀をすると幸せそうにお互いを見つめ合い、優しく微笑った。

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