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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第12章 その愛の淵までも…
…綾香のサロンコンサートが始まった。
オペレッタ、イタリア歌謡、流行歌謡、童謡…とジャンルに拘らずに様々な唄をまるでサロン内にいる人々に語りかけるように歌い上げる。
梨央の美しい伴奏に導かれた綾香の声は、空気中に優しく広がる。
そしてシャボン玉のような虹色の輝きを煌めかせながら、柔らかく弾ける。

大人も子どもも皆、その自由で伸びやかな唄に心を預け、その稀有な世界に酔いしれるのだ。

綾香のコンサートは手の空いている使用人は聴いて良いことになっている。
下働きのキッチンメイドから家政婦まで壁際に佇み、うっとりとその天使の歌声に聞き惚れていた。

藍染は綾香の唄に感嘆しながらも、暁を見つめることを止めることができない。

…綾香がドイツ人歌手、フラウMの唄を歌い始めた。

哀愁の漂うやや退廃的な、愛の唄だ。

…いつか、あの街角で会いましょう。
昔みたいに…。

ふっと暁の横顔に変化が起きた。
白い百合の花に似た清楚な横顔が、不意に色めき匂い立つような艶を帯び始めたのだ。
藍染は、眼を見開く。

…暁の左手…ソファの向こうに隠されたその白い手を、月城がそっと触れ、ゆっくりと愛撫するように撫で下ろしていたのだ…。
月城の指が暁の指を絡めとり、しなやかに往復し始めた。
…その様はまるで、優雅な…しかし淫蕩な性の営みのような動きであった。

暁は薄い瞼を朱に染めながら、長い睫毛を震わす。
半開きになった形の良い薄紅色の唇は甘く色づき、浅い呼吸を繰り返している。
…必死で快楽に耐えている暁は、ぞっとするほどに淫靡で…そして有り得ないほどに美しかった。

優美な眉は切なげに寄せられ、その潤んだ眼差しは自分に酷い悪戯を仕掛ける傍らの男を見上げる。
睨むような瞳は…やがて縋るような色に変わる。
…暁は自分からその執事の美しい指に指を絡ませ、強く握り返した。
意趣返しのようにその甲に爪を立てる暁を、月城は少しも気にする様子もなく、形の良い唇に薄い笑みを刷き、その白く華奢な手を愛撫し続けたのだ。

…客人はすべて綾香の唄に夢中になっている。
誰一人としてこの二人の淫らな戯れに気づくものはいない。
…ただ一人…
藍染を除いては…。

藍染は切れ長の瞳に憎悪に等しい激しい色を浮かべて、その美貌の執事を見据え続けるのだった。



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