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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第12章 その愛の淵までも…
「…月城…?」
目覚めてすぐに隣の褥を弄る。
…冷たいシーツの感触が暁の手のひらに伝わるばかりだ。
ゆっくりと上体を起こす。
…眩い朝陽が射し込む広い部屋は、きちんと片付いており壁際のクローゼット前には暁の服が揃えられていた。
ベッドサイドに、翡翠のペーパーウェイトが置かれた白いメモがあった。
手に取って目を走らせる。

「…申し訳ありません。屋敷より緊急の要件が入りました。
よくお休みなので、起こさずにまいります。
朝食はテーブルの上に…。
必ず召し上がってください。
それでは、またご連絡いたします…か…」

暁はふっとため息を吐く。
忙しい月城は休みの日でも急に呼び出され、出勤することがままある。
今は執事の業務に加え、北白川伯爵家の財産管理人でもあるので、その責務は重大だ。
…仕方ない…。

今日はゆっくり二人で過ごせると思ったんだけどな…。
最近、とみに多忙な月城とは休みがなかなか合わない。
暁も土日に出張などが入ることがあるので、二人の休みが重なることは極めて貴重なのだ。
…話したいことがたくさんあったんだけど…な…。

つい、恨みがましい気持ちになってしまいそうになる自分を戒めるように一息つき、さっと寝台から起き上がる。
…月城は真摯に業務に向き合っているんだ。
北白川伯爵家は女所帯でいらっしゃるから、執事の月城は頼みの綱だろうし…。
僕も明るく応援しなくては…。

そう前向きに気持ちを切り替え、暁はクローゼットの前に立ち、着替えを始めた。
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