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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第12章 その愛の淵までも…
藍染は爽やかに微笑みながら、暁に近づく。
「実は昨日からここの子どもたちに勉強を教えることになったんです。たまたま仲見世で知り合った子どもに算数を教えて欲しいと言われて…。
休みの日で良いなら…と承諾したんです。
今日は炊き出しがあると聞いたので、それなら何か僕にも手伝えることがあるかな…と思いまして」
「…そうだったんだ…」
…優しい青年なんだな…と暁の胸の中がじわりと温かくなる。

「けれどまさか暁様がこちらにいらっしゃるとは思ってもみませんでした」
藍染は品良く整った貌に柔らかな笑みを浮かべて気さくに話しかけてくる。
暁もそんな彼につられるように微笑みを漏らす。
「実は三年前から、炊き出しのボランティアを手伝っているんだ」

仁が我がことのように自慢げに声を上げる。
「暁様は、ご自分がやっている会社から食材を無料でくださっているんだ!
ビストロ・アガタていうすごく美味しい洋食の店のコックさんが毎回来てくれて、美味しい炊き出しを作ってくれるんだよ!」
藍染は瞳を輝かせる。
「それは素晴らしいですね!
…暁様はお貌だけでなく、お心もお美しいのですね」
手放しの賞賛に面映くなり、暁は俯く。
「…そんなこと…。出来ることをやっているだけだよ…」
「なかなか出来ることではありませんよ。貴方様みたいな大貴族の御令息が…。
…貴方はやはり素敵な方だ」
暁の頭上から熱の籠った言葉が聞こえ、思わず見上げる。
若い青年の澄んだ瞳が、瞬きもせずに暁を見つめていた。
「…褒めすぎだよ…」
熱い眼差しを避けるように、暁は藍染に声をかけた。
「さあ、配給の時間だ。藍染くんは外に並んでいる人たちを誘導してくれるかな?食事はたっぷりあるからゆっくり入って来てもらうよう声掛けを頼む」
「かしこまりました」
藍染は頷くとすらりとした長身の後ろ姿を見せながら、足早に教会の入口へと向かった。

暁はほっと一息つくと、シスターや孤児院の子どもたちがいるテーブルへと踵を返し、優しく伝えた。
「それでは給食を始めます。皆さんに気持ちよく食べていただけるように、よろしくお願いしますね」
子どもたちの弾けるような元気な返事が返ってきた。

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