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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第12章 その愛の淵までも…
教会の奥は既に厨房で作られた温かなシチューや焼きたてのピロシキが寄せられた机の上にふんだんに用意されて、いかにも美味しそうな匂いと湯気を立てていた。
炊き出しの日にはビストロ・アガタのシェフの1人が厨房に立ち、料理を作っている。
この教会の炊き出しはただの味気ない給食ではなく、その美味しさで大評判で、配給を求める人々はこの日を楽しみにしているのだ。

最初に、炊き出しの調理を手伝って貰えないかと暁はシェフに遠慮勝ちに依頼した。
もちろん給金は払うのだが、業務外の仕事をさせることを申し訳なく思ったのだ。
しかし、シェフは…
「私も昔は貧しい生活をしていた時代がありましてね…。だから、私が作った料理を食べて美味いと思って貰えたり、頑張って生きようと思って貰えたらこんなに嬉しいことはないですよ」
と、言って快く協力してくれたのだ。

…「美味しい食事は何よりも勤労意欲を引き出す源だ」
礼也は常日頃からそう口にし、屋敷の使用人達への食事の経費をふんだんに与えた。
暁の炊き出しの慈善事業も真っ先に賛成してくれた。
もちろん月城も暁の仕事を何より応援してくれている。
北白川伯爵家からと言って様々な食材を提供してくれたり、暁と2人で炊き出しの仕事を手伝ってくれることもしばしばだ。
やはり貧しい幼少期を過ごした月城はこうした炊き出しにも繊細な心遣いをしてくれるのだ。

…本当は今日も月城と来たかったな…。
なんて…僕はすぐに月城に甘えてしまって…駄目だな…。
ついつい月城を恋しがる甘い自分に喝を入れようと、暁はエプロンを付けるときびきびと配給の準備にかかった。

…教会の外には既に炊き出しの給食を待つ人々がたくさん列を成していた。
シスター達や孤児院の年長の子ども達も手際よく皿を並べる準備を始めている。

暁が仁と共にトレーに皿を載せていると、教会の入り口から孤児院の子ども達の賑やかな声が聞こえた。
「お兄ちゃん!来てくれたの?」
「ああ、もちろん。君たちと約束したからね…」
…どこか聞き覚えがある声にふと貌を上げ、暁は驚いた。
「…君は…!」
目の前の青年もまた暁を見ると目を輝かせ、無邪気に笑いかけた。
「暁様ではありませんか!…こんなところでお会い出来るなんて!」
「…藍染…くん…?」
…そこには先日、北白川伯爵家で言葉を交わした新人の下僕、藍染が佇んでいたのだった。
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