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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第12章 その愛の淵までも…
二人ははっと階上を振り仰ぐ。
二階の奥の部屋から、慌てふためく使用人の声が伝わって来る。
月城は暁を振り向き、素早く告げる。
「失礼いたします。梨央様のご様子を見てまいります」
「…う、うん…」
月城が風のように階段を駆け上がってゆくのを見送る。

屋敷内が慌ただしい気配に包まれた。
暁も梨央の様子が気になり、大階段を昇る。
突き当たりの奥の部屋からメイドが出入りするのが見える。
…そっと近づき、扉の前に立つ。
部屋の中を覗いた暁の瞳が大きく見開かれる。

…月城が苦しげに呼吸を繰り返す梨央を腕に抱き、その透き通るように白い頬を撫でながら呼びかけていた。
「梨央様!梨央様!ゆっくり呼吸をなさって下さい」
しかし、梨央は急な発作に気が動転しているのか、浅い呼吸を繰り返すばかりだ。
苦しそうに咳込む梨央に、傍の侍女はおろおろとするばかりだ。
「どうされたのでしょう。急にお苦しみになられまして…」
月城ははっと気づいたかのように眉を顰める。
「子爵邸のサロンで喫煙をされた方がいらした…。気にはなっていたのですが、最近梨央様の調子も良かったので…油断しました。お部屋を替えてもらうべきでした。
…至急車の用意をお願いします。このまま日赤にお連れします」
月城が梨央を抱き上げ、立ち上がろうとしたその時…息も絶え絶えに梨央が訴える。
「…つき…しろ…息…が…できな…」
気管が急激に狭くなり、パニックを起こし始めている梨央の貌は血の気が引き、蒼ざめている。
「落ち着いて下さい。梨央様、ゆっくり息をして…梨央様⁈」
しかし梨央は小刻みに震えるばかりで、反応も捗々しくない。
急激に意識が遠のき出したのだ。
…不意に月城が梨央の華奢な顎を掴むとその花のように可憐な唇を開き…己れの唇を押し当て、吐息を吹き込み始めた。

暁は息を呑んだ。
叫ばないでいられたのは、奇跡だった。

月城はまるで情熱的な口づけを交わすかのように、梨央の唇を奪い続ける。
何度も…何度も…。

…白いレースのドレス姿の梨央は、三十路半ばとは思えない少女のような可憐な姿であった。
結い上げられた美しい髪が解かれ肩に掛かり、尚のこと彼女を幼げに見せていた。
妖精のように美しい少女を抱く月城は、黒い燕尾服姿で、さながら彼女に愛を乞う青年貴族のようであった。
…なんて美しい二人なんだ…。
暁はぼんやりと思う。
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