この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第12章 その愛の淵までも…
…そして、梨央が静かに尋ねる。
「…月城…。私たちは貴方に無理をさせているのではないかしら…?」
月城が訝しげに眉を顰めた。
「無理…?」
「貴方はお父様にずっと忠誠を誓い、忠義の精神で私とお姉様を守ってくれているわ。
この北白川家の財産管理のみならず、資産運用…。執事の業務だけでも大変なのに、その上株の売買や領地の視察、小作人の管理まで…。
今回、私の演奏会の付き添いで一か月以上も貴方の時間は取られてしまっているし…。
多忙すぎて暁さんとの二人の時間も殆ど持てていないのではないかしら?
…私は貴方と暁さんの時間を大切にしてほしいの。
暁さんはとても我慢強い方だと思うの。
貴方のことを思ってきっと我儘も仰らない…。
だからこそ、無理はして欲しくないわ」
梨央がこれほどまでに暁のことを思い遣ってくれることに、感謝の念が沸き起こる。
と、同時に暁への済まなさも、己れの不甲斐なさと共に思い知らされる。
…けれど…
私は旦那様に託されたのだ。
…初めて執事見習いとして北白川家に連れてこられた時から…。
この目の前の麗人を生涯守るように…と。
その約束を違わす訳にはいかないのだ。

月城はかつて少女だった頃の梨央に話すように穏やかに…しかし確固たる意志を持って語りかける。
「梨央様のお心遣いはとても嬉しく思います。
…けれど私は旦那様に梨央様と綾香様をお守りするようにとの任を授かりました。
それが私の職務であり使命です。
暁様とのことはまた別の話です。
どうぞ私の仕事について、お気を煩わされませんように…」
梨央は何か言おうとして、ふっと眼差しを和らげる。
「…貴方は相変わらず真面目で優しいのね…。誰にでも…」
…けれど…と、澄み切った眼差しを月城に当て続ける。
「…大切なひとの手は離してはだめよ。
…手だけではないわ。そのひとが何を考えているのか…よく見つめてあげて…」
「…梨央様…」
…そうでないと…と、梨央の作り物のように形の良い唇がやや哀しげに開かれる。
「…愛は思いのほか儚いものよ。ふとした弾みで大切なひとを見失ってしまうかも知れないから…」

/954ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ