この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第13章 永遠の最果て
招待客が一斉に二人に注目する。
音楽以外に話し声はなく水を打ったようにしんと静まり返る中、鬼塚と暁は手を取り合い、ワルツを踊り始める。

鬼塚のステップは意外なほどに滑らかだった。
西洋舞踏など踊ったことがないと思っていた暁は内心踊いた。
暁の手を握り、鬼塚は面白そうに笑う。
「意外か?」
「…ええ…。ワルツ…踊れたのですね…」
「憲兵隊は、近衛隊や海軍と違い雑草育ちばかりだからな。
…俺などその典型だ。上州の水飲み百姓の生まれだ。
ワルツは憲兵隊に入って習った。
上司の命令だ。…俺たちの仕事はどんな場所に潜入するか分からんからな」
暁は素直に感心する。
…けれど、油断はならない。
「お上手で驚きました。
…で?わざわざ夜会にまで来られて私を探された理由は?」
硝子細工で出来たような繊細な美貌が緊張感を帯びているのを、機嫌良さげに眺める。
「…察しはついているのではないか?もちろんあんた自身の用件ではない」
暁は瞬きもせずに、鬼塚を見つめた。
優雅なヨハン・シュトラウスの調べに合わせて、二人は滑らかに踊り続ける。
「…はっきり仰って下さい」

「…月城森」
とっておきの言葉を口にするように、男はその名前を出した。
握られた暁の手が冷たくなった。
その手を黒革の手袋が強く握りしめる。
「…あんたの最愛の恋人だな」
「ええ。そうです。彼が何か?」
怯まずに鬼塚を見返す。
「月城の身辺を調べてあんたの名前が挙がった。事実上結婚していると…。男同士じゃないか。俺は興味が湧いた。で、今夜ここに来た。
…そして、あんたを見て納得した。こんな美人なら男でも有りだとな。
…俺は今までこんなに綺麗な男を見たことがない」
図らずも暁の美貌に魅せられたように隻眼を輝かせ、唄うように告げる。
暁の眼差しに初めて怒りの炎が宿った。
「早くご用件を仰って下さい。このままでは皆が不自然に思います」
鬼塚は低く笑った。
「見かけによらず気の短い坊やだ。
…いいだろう。教えてやる」
黒革の手袋に包まれた手が暁を引き寄せ、その細腰に回された手が強引に抱き寄せる。
そうしてくちづけするような距離で、薄い唇がさらりと囁いた。
「月城森は反政府運動の首謀者の友人だ。
そして彼は今、要注意人物として憲兵隊からマークされている」

/954ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ