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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第13章 永遠の最果て
その夜、暁が帰宅するとそこには既に月城の姿があった。
まだ執事の制服姿のままだ。
恐らくは急遽、帰宅したに違いない。
その表情は蒼ざめ大変に険しく、暁を居間に出迎えるなり詰問するように尋ねた。
「縣様の夜会に鬼塚少佐が来たのですね?」
暁は、月城の口からあの憲兵隊の将校の名前が出たことがショックであった。
「…月城…」
「彼は何を言いましたか?貴方に何か危険な振る舞いをしませんでしたか?どこか…お怪我などはありませんか?」
矢継ぎ早に質問を繰り返し、暁の身体を上から下まで食い入るように見つめた。
努めて冷静になろうとしてはいるが、その様子はいつもの月城とはかけ離れた姿であった。

…こんな月城は初めてだ…。
暁は静かに首を振った。
「…大丈夫だ。僕は何ともない。何もされてはいない」
月城は暁の肩に手を置いたまま、深く安堵の息を吐いた。
「…良かった…」
そして、震える両手で暁の貌を包み込む。
「…貴方に…貴方にもしものことがあったら…私は生きてはいません」
普段より更に冷たい月城の手を、暁は握り返す。
眼鏡の奥の安堵と怒りと焦燥が入り混じった黒い瞳を見つめ、口を開いた。
「…教えてくれ。なぜ憲兵隊の将校が君を追っているのだ?…彼は君が反政府運動の首謀者の仲間だと言った。
僕は信じてはいない。僕が信じているのは君だけだ。
だから君の口から真実が知りたい。
本当のことを教えてくれ」

月城は瞬きもせずに暁を見つめ、しばらく口を閉ざしていたが、やがてゆっくりと答えた。
「…鬼塚少佐が言っていることは真実ではありません。
私は反政府運動に加わってはいません。
運動のリーダーは私の大学時代の友人なのです。
彼が過激なビラ撒きをして逮捕され、私は彼の保釈金を支払い、身元引受け人となったのです。
…あのまま留置場にいたら、彼は酷い拷問の果てに命を落としていたことでしょう。
彼には身重の妻とまだ幼い子どもがいて、その二人を悲しませる訳にはいかなかったのです。
そうして、私はあの鬼塚少佐に目をつけられたようです。
…しかし…まさか貴方の元にいくなんて!」
口惜しそうに唇を噛みしめる月城を見て、暁は安堵の息を吐いた。
「良かった…!やはり君は危険分子などではなかったのだ…!」
思わず全身から力が抜け、その場に崩れ落ちそうになる暁を月城はすかさず抱き留め、そのまま強く抱きすくめた。
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