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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第13章 永遠の最果て
暁は耳を疑った。
「え?…憲兵隊…て…だって、憲兵隊は国家に忠誠を誓う首相の一番の側近的組織なのでしょう?…」
「いや、そうとは限らない。
…昨年就任した現首相は、アメリカに留学経験もあるどちらかというとリベラルな思想の持ち主だ。
しかも彼は海軍出身だ。
海軍は陸軍とは仲が良いとは言い難いし、政策でも常に対立している。
…陸軍と憲兵隊は同族と言っても過言ではない。
憲兵隊が陸軍の手足となって影で様々な人物を粛清しているとの噂もあながち嘘ではないだろう。
特に憲兵隊のトップはアンチ海軍でしたたかな策略家だ。
…血気盛んな若手将校らを焚き付けて計画を立てたとしても不自然ではない。
…だとすると、この文書の信憑性は増すのだ…」
慎重に見識を述べる礼也に、月城は冷静な声で伝えた。
「…轟は以前内務大臣の秘書をしていました。
その時に憲兵隊上層部のこのクーデター計画に気づき、密かに文書を持ち出したのです。
それに気づいた憲兵隊が轟を執拗に追い始めた…。
あの異常なまでの拷問と、そしてその上の惨殺は、轟が憲兵隊の謀略の秘密文書を持ち出したと気づいたからでしょう。
だから保釈金を出し、身柄を引き受けた私にまで捜査の手を伸ばした…。
その上、暁様にまで…。
…恐らく、あの鬼塚少佐はこのクーデター計画の首謀者の一人なのでしょう。だからあんなにも執拗に轟亡き後、芙美さんの行方を追っているのです」

暁がはっと眼を見開いた。
「鬼塚少佐が?…でも…彼は…」
…暁はカフェでの鬼塚を思い出す。

…壮絶な過去を淡々と語った鬼塚…。
妹への切なくなるような、禁欲的な愛情…。
彼が…そんな恐ろしい計画を立てるだろうか…?

暁に見せた笑顔は、胸を突かれるほどに素朴で…そして寂しげだったのだ…。

「…どうされましたか?暁様…」
気遣わしげに暁を見つめる月城に、我に帰る。
「ううん、何でもないよ」
暁は慌てて首を振った。

「…だとすると、彼らが君の居場所を突き止めるのも時間の問題だな…」
礼也は思慮深げに呟くと二人を見つめ、真摯な口調で語り始めた。

「あまり時間がない。直ぐに計画を実行する必要がありそうだ」
「計画…?」
二人は異口同音に尋ねた。

礼也は悪戯めいた眼差しで少し笑った。
「暁にはやはりフランスに渡ってもらう。
しかし残念ながら一緒に行くのは私ではない。
…月城、君だ」


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