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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第13章 永遠の最果て
月城と暁は息を飲んだ。
最初に口を開いたのは月城であった。
「礼也様…?何を仰っているのですか?」
礼也はまるで親愛なる弟を説得するかのように、話し始めた。
「いいか?君はこの、国家が転覆しかねない機密文書を手にし、内容すらも知ってしまった。
…それに…轟夫人と子ども達を春さんに託したということは、君は自ら罪を被るつもりなのではないか?」
暁が息を飲んだ。
月城は瞬きもせずに礼也を見つめると、静かに口を開いた。
「…はい。芙美さんには、もうこの秘密文書のことを忘れて、二人の子どもたちを健やかに育てて欲しいのです。…私は、この文書を焼き捨てたのち、警察に出頭するつもりです。」
暁は叫んだ。
「そんなの駄目だ!そんなことをしたら月城は殺される!拷問されて…轟さんのように殺されてしまう!
駄目!絶対に行っては駄目!」
月城の胸に取りすがり涙を流す暁を、強く抱きしめる。
「許して下さい、暁様。私は死にません。どのような拷問を受けようと、耐えて生き延び…必ず貴方の元に帰ってまいります。だから泣かないで下さい」
「嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ!君を何処にも行かせない!死ぬまで一緒だって言ったじゃないか!嘘つき!嘘つき嘘つき嘘つき!」
子どものように月城の胸を拳で叩く暁を、月城は必死で宥める。
「暁様。私はもう逃げたくはないのです。北白川伯爵家の執事は辞職いたしましたが、私にはまだ執事としての矜持があります。
伯爵に無様な姿を知られたくない。伯爵家の家名に泥を塗りたくないのです。
堂々と警察に出頭して、全てを話します。話せば理解してくれる人も居るはずです」
「甘いな」
礼也の鋭い一言が飛んだ。
「警察や憲兵隊が道徳の教科書のような処遇をしてくれるはずが無い。ことに君が手にした機密は絶対に知られてはならないクーデター計画なのだ。
仮に私達がどれだけ裏から手を回したとしても、良くて釈放後に君は召集され、戦場の最前線に送られるだろう。
…そして犬死するのだ。あのクーデター計画の口封じのために」

暁が激しく首を振る。
「嫌だ!絶対に嫌だ!絶対に出頭なんかさせない!卑怯でも無様でもいい!月城は僕と生き延びて!」
「暁様…!私は恩義ある伯爵様に仇を返す訳にはいかないのです。忠義は通さなくてはなりません。逃げることは伯爵様の美徳に反する行為です。分かって下さい。
必ず、生き延びてみせます!」


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