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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第14章 Coda 〜last waltz〜
うなだれている泉の首筋に温かく芳しい薫りがする白い腕が強く巻きついた。
「バカ!バカバカ!泉のバカ!本当に…バカな上に嘘つきなんだから!」
「司…?」
子どものように怒った貌が泉を睨む。
「鈍感鈍感鈍感!バカバカバカ!僕のことを愛してるって言ったくせに!ずっと守ってくれるって言ったくせに!もっと自信を持ってよ!」
琥珀色の瞳に涙が溢れ出す。
「司…!ごめん!」
司に対しては不器用な自分が腹立たしい。
泉はぎゅっと司を抱きしめる。
もがいていた司は次第におとなしくなり、やがて小さな声で呟いた。
「…プレゼントは返したよ。…恋人でもないのにそんな高価なものは貰えない…て言って」
「…司…」
こわごわと腕の力を緩めると、司は真っ直ぐな瞳で泉を見上げた。
「…青山さんはただの友人だ。…それに…僕は泉以外にセックスした人はいない」
「司…!」
「泉じゃないと嫌だ。…これから先もずっと…」
いじらしい言葉を刻んだ唇を堪らずに貪る。
司が苦しげに喘ぐのも構わず、切羽詰まったようにくちづけを繰り返す。
…愛おしい…俺の恋人…。
少し生意気で跳ねっ返りだけど、誰よりも無垢な愛を惜しみなく与えてくれる大切な恋人…。
俺は、この美しい恋人に一体何を返すことができるのだろうか…。

ようやく唇を離すと、恥じらうように俯く司に告げた。
「…司…。愛している」
驚いたように貌を上げた司に、静かに続ける。
「…愛している。…これから、幾度喧嘩してもその都度やり直そう。…壊れてもまた作り上げる。…俺は諦めない。お前と二人で…死ぬまで…一緒にいたいから…」
司は泣きじゃくりながら泉にしがみついた。
「…約束だよ。諦めないでよ…」
「うん。諦めない。…どうしたら信じてもらえる?」
困ったように司の貌を覗き込む泉に、煌めくような微笑みを見せながら、囁く。
「…キスして。…何百回も…何千回も…」
「…司…」

…雪は、静かに降り積もる。
階下の部屋で密かに…生まれたばかりの愛を大切そうに懐く恋人達を、そっと包み込むように…。
…いつまでも、降り積もるのだ…。







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