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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第14章 Coda 〜last waltz〜
暁人は穏やかに薫に語りかけた。
「…薫、僕はね、この愚かしい戦争を早く終わらせるために海軍に入りたいんだ」

「お前、何言ってるの⁈」
ちっとも訳が分からないという風に、薫は苛々した表情のまま美しい眉を吊り上げた。
暁人はもう一度薫の手を取った。
大きな手に力強く握りしめられ、もう振り放すことはできなかった。
「軍隊の外にいるだけでは、何も分からない。
ましてや僕達はとても恵まれた環境にいる。
常に多くのものを与えられ、多くの人に守られて生きてきた。
…安全な場所で足掻いているだけなんて嫌だ。
内部に入り、内部から見ることで判ることがある筈なんだ。出来ることがある筈なんだ。
僕は、戦争を終結させるために士官学校に入って勉強し、それが出来る強い力をつける。
僕と同じ思いの若者もきっと多くいる筈だ。
事実、井ノ上先生はこの戦争には何の得もないと仰ったんだ。自分は士官学校の生徒たちが戦後、自由な職に就けるよう、英語教育を辞めないとまでね」

暁人の熱を帯びた話を聞く内に、薫の抵抗は大人しくなってきた。
暁人は柔らかく、薫の両手を握り直す。
薫の心にしっかりと届くように、眼を見て語り続ける。

「…何より、僕はお前を守るために、海軍に入りたいんだ」
「…え?」
薫の黒目勝ちの大きな眼が見開かれる。
「…僕はお前を守りたいから、海軍に入る。軍人になる。お前がこれから、何の心配もなくいつものように我儘を言ったり、拗ねたり、光小母様と喧嘩したり…そして僕に笑いかけてくれたり…そんな薫をずっと見ていたいから、海軍士官学校に入りたいんだ」

薫の小さく美しい貌が見る見る内に歪む。
その貌を見せないように暁人に背を向けた。
「…そんな…バカじゃないか、お前…!僕の為に軍人になるだなんて…」
暁人が微笑みながら背後から抱きしめる。
「うん。バカかもね」
薫はもう抗わなかった。
ただ震える声が尚も毒づく。
「…お前は体格もいいし運動能力も高いし頭もいいし語学も堪能だし度胸もあるし落ち着いてるし、絶対直ぐにいいように使われる!危険な任務に就かされる!」
暁人はくすくす笑った。
「こんなに褒めてくれたのは初めてだね」
薫が子供のように首を振り、振り返って睨みつける。
「だから!死んだら元も子もないだろ!お前が死んだら…!」
暁人の静かに澄んだ瞳が薫をひたりと見つめた。
「絶対に死なない」
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