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隠密の華
第10章 九

* * *

「おいで、胡蝶」

設樂様と別れてから白夜の部屋へ連れて行かれると、即座に白夜から呼ばれ、恐る恐る近寄った。

「はい……」

やはりこうなるのか。しかし、もう私と白夜は夫婦。コレも妻として、当然の務め。

「もっと近くへ。口付けても良いか?」

「ええ……」

部屋の中央に立つ白夜の前まで近寄り、真剣な白夜へ返事を返すと、私は鼓動を速めながら目線を上げる。

そして白夜と目を合わせ、微笑む白夜へ私もぎこちなく微笑んだ。

「夢ではないよな?……嘘のようだ。胡蝶が俺の妻になるとは……」

「……夢ではないです」

「必ず大事にする。一生、死ぬまで二人添い遂げよう」

……こういう時は、何と答えるべきなのだろう。経験したことがないから分からない。……が、こうも相思相愛の男女は、いとおしそうなのか。

「胡蝶、俺はお前の為なら命も惜しくない」

「……わ、私もです。白夜……」

熱い眼差しに恥ずかしくなりながら、白夜に合わせて話している間に、私の唇には白夜の唇が重なっていた。

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