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隠密の華
第11章 十

あの日城へ戻ってから桐は、私を都と呼ばなくなった。白夜の前では胡蝶様と呼び、私と二人になると胡蝶と呼び捨てする。唯一城の中で心を許せる存在。そんな桐と顔を合わせばいつも喧嘩になるが、心の中で私は感謝していた。

「……そういえば、来てるぞ」

「来てる?とは?」

「設樂様だよ!門のところで待ってるから会ってこい!」

「それを早く言え」

相変わらずにらみ合いながら会話して、すぐに扉へ向かい歩き出す。

「……会わせたくねーんだろうが」

扉から出る瞬間、桐が何か呟いたが、よく聞こえなかった。そのまま廊下へ出て、門へ急ぎ足で向かった。
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