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隠密の華
第11章 十

* * *

「胡蝶、元気だったか?」

城の門へ着くと、青空の下、設樂様が一人笑顔で立っていた。何も変わらない。優しく、この笑顔に安心する。

「はい。設樂様もお変わりなく?」

「ああ、胡蝶と離ればなれになってしまい寂しいが……山賊の頭を止め、城にも戻り元気だ」

「設樂様も妃を迎えては如何です?誰かいらっしゃらないんですか?」

「誰かか……」

設樂様がふと寂しげな顔をすると、気になって尋ねた。すると設樂様は私の顔をじっと見つめ、答える。

「好きな女は結婚してしまったからな。さて、どうしたものか」

「……すいません。辛いことを思い出させてしまいました」

知らなかった。そんな事。知らなかったとはいえ、辛いことを思い出させてしまった……。私は何て事を。

申し訳なくなり謝ると、設樂様がまた微笑んだ。


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