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ジャンクフードでできている
第16章 花の名前
道の駅のトイレの個室の壁に、連絡先がらくがきされていたのでかけてみた。

呼び出し音。

「…はい」

相手が電話をとった。

女の声だ。

知らない番号からなので、警戒しているのだろう。

名前を名乗らない。

「あの…」

「…はい?」

(かけてみたものの、どう切り出そうか?正直に言ったら切られるだろうな…でも、まあ仕方ないか)

「あの…あなたの電話番号が落書きされてましたよ?」

「…ああ」

(「ああ」って?知ってたってことか?)

「場所とか説明しましょうか?」

「…いえ」

(「いえ」??普通、誰がどこに書いたのか気にならないか?)

「えっと、消したり、管理者に伝えたりしましょうか?」

「…必要ありません」

「……」

「…もういいですね」

(まてまて、どういうことだ?…これは誰がどこに書いたか知っていてそれを認めているっていうことか?)

「ちょ、ちょっと待って…あなたはそれでいいのですか?」

「別に」

「こんな電話が何回もかかっているんじゃないですか?」

「そうですね」

どうしてだろう?

もうこんな電話は切ってしまってもいいのに、切れない。

なんでだ?なにかが気になる…

「そうだ…あなたが書いた?そうだ…あなたが自分で連絡先を書いたんですね?」

「…さあ」

「さあって…せっかく心配してかけたのに…」

「本当に心配してくれたんですか?余計なお世話ですよ、○○さん?」

体がこわばる。

「ーな、なんで、俺の名前を知ってる?!だれだ?お前は?!」

「あらあら、自分でかけてきたくせに…わかりませんか?」

くすくすくす。

女が電話越しに笑う。

「そうだ、ヒントをさしあげましょうか?」

「…ヒントだと?」

「嫌なら電話を切ってもいいんですよ?」

わからなかった。

俺にはわからなかった。

焦りと、込み上げるいらつき。

唾をのみこむ。

ヒント…

「本当は、気づいているんじゃないんですか?ねえ…ふふふ」

…やばい、これは、やばい。

…そうだ、ヒント。

彼女は…いつもクイズを出してからかっていた…あの娘は…そして、俺は…あの夜…

ぴっ。

つーつーつー。

俺は通話を切った。

汗をかいていた。

暗闇の中、スマホの画面だけが明るかった。


「いつか埋めたもの」


















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