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溺れる金魚
第15章  彼の怒り
カラカラとガラス窓を開ける。


「……昨夜俺は、君に一体何をしてしまったんだろうか」

その言葉に顔を向けるでもなく一心に水やりをしている彼女。


口も聞きたくないほど怒らせたのか?

「なぁ?聞いてるのか?」


語気を強める。


びくんと彼女の体が跳ねた。


「……あ……ご、ごめんなさい。考え事していて」

「そうか。昨日の事なんだけど、俺……」


「その事ならもう良いんです。何でもないです。大したことではないので……もう、大丈夫ですから……」


そう言うと手に持っていたジョーロをスツールの上に置いて、目も合わせずに彼の横を素通りして室内へと入ろうとした。



それを小さなため息と共に目で追う。


何でもない、と言う時に限って何でもあるのが彼女の常だが……。



大丈夫が大丈夫ではない事も……。
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