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溺れる金魚
第3章  姫金魚
「……欲しいのか?」

「え?」




一瞬動揺した自分を恥じた。

子どもを、と彼は聞いたのだ。



それなのに、何て勘違い。





私が欲しいのは、あなた……。



あなたの躰。





そう素直に口に出したら、彼は困るのだろうか。

そう思いながら「どちらでも……」と気の無い素振りで紗良は答えた。



一途に思い続け来たからこそ、焦がれる。

子どもを欲しがれば、多分そういうこともしてくれるのだろう。
ただ、彼にとって……それは義務でしかない。



行為の後は虚しさしかないと容易に想像が出来た。

ベッドの上で一人、寂しく泣くのだと……。




父も嘗て外に愛人を幾人か作っていたのを幼いながらも感じ取っていた。

自分の子どもにも同じ辛さは味わわせたくはなかった。
だから、子どもは……。

彼の子だ。

産めばきっと愛情を注げるだろう。



でも、彼はその子の事を……?

愛せると紗良は思えなかった。
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