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溺れる金魚
第20章  ほどける心
「……紗良?」

ずっと、呼び続けていたように思う。


その名を何度も呼びながら彼女の啼き声に更に興奮して、攻め続けていたあれは……?

「あれは夢ではなかったのか?」


先程からぐるぐると頭の中を巡る言葉が口に出る。

その言葉に漸く顔を上げる紗良。


「……少しは覚えていますか?」



その微笑みはまだ悲しみで満たされていた。

「紗良……すまない。紗良……」

彼女を再び抱き締める。その手に強く力を込めた。


胸の中でまだしゃくり上げる彼女が愛しくて堪らない。


どうして酔ったまま彼女を抱いてしまったのか。



彼女との初めての夜をもっと鮮明な記憶で残しておきたかった。
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