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溺れる金魚
第33章  ホワイトクリスマス
「あの、帰ってきたら連絡させましょうか?もしお急ぎなら、多分母が同行してるはずだから、母の方に連絡してみますか?」

彼女のまっすぐに向けられる瞳。


佐野の方が後ろめたく視線を逸らす。

紗良を、彼女を女として見てしまう自分を見透かされてしまえば清純なか彼女には間違いなく気持ち悪がられるだろう。


気の無い素振りを演じながらも、そうか今夜彼女はイブを一人で過ごすのかと心の内が曇り始めた。


共に過ごしてやりたい。

そう思うのは、エゴだろうか。



「では……お言葉に甘えて夫人に連絡を取って頂けますか?」

「はい。では中でお待ちくださいっ」


佐野の返事を聞くや否や踵を返してリビングへと向かう。



その後ろ姿がまるで尻尾を千切れんばかりに振っているよう。

その愛しさに、佐野は自然と笑みを漏らした。
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