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溺れる金魚
第33章  ホワイトクリスマス
ふうっとため息を吐くと佐野は紗良の手首を掴んだ。


「まだ約束の時間には早いので、その間お付き合い頂けませんか?早速行きましょう」

紗良の返事も聞かずに自らのコートを手に取る。


「紗良さんも支度して」

二階にある彼女の部屋へと階段まで連れてきて促す。



「っはい!」

タタタとその軽やかな上りに、佐野は安堵の笑みを漏らした。





あの時のイルミネーションの景色は忘れてしまったが、彼女の喜びは今でも忘れられない。


佐野にしては強引に取った行動だったが、彼女をほんの一瞬でも幸福に染められたなら良かったと、その後も何度もその時の彼女の笑顔を佐野は思い出していた。
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