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溺れる金魚
第33章  ホワイトクリスマス
「せっかくのクリスマスイブですし、家に籠るのはもったいないですよ。早速行きましょう」



佐野がそう言って立ち上がる。

途端に鳴ったスマートフォン。


会社からだった。


「……はい。ええ……いえ……はい。分かりました。では、後程」



何てタイミングの悪い。

でも、今からなら一時間は側に居てやれる。


腕時計を確認する。

「あの……お仕事、ですか?クリスマスイブなのに、大変ですね。今の……イルミネーションは無かったことで大丈夫ですから、どうか気になさらないで下さい」


「いや、でも……」

「本当にっ……本当に、大丈夫ですから……」



その無理に作ったと分かる笑みの、今にも泣き出しそうな紗良に佐野の心臓は鷲掴みされた。



もっと素直に甘えてくれて構わないというのに。
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