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溺れる金魚
第11章  交わり
帰ってきた彼が眠った振りをしていた紗良の手を握り、いつものようにその甲に口付けをする。




唇が微かに触れる程度。

それでも紗良は嬉しくて、笑みを必死に我慢した。



起きているとばれてしまったなら、きっと彼は一生その行為を二度としてくれなくなる。





あの時はいつもと少し違っていた。




いつもよりも酔っていたからだろう。



手の甲のキスに加えて髪も撫でて、そこにキスを落とした。






その時は幸せすぎて今にも跳ねてしまいそうに嬉しかった。





でも……。



今思うと、あの行為は今頃共にしている誰かと間違えて行ったことなのかもしれない……。




酒に酔っての出来事だ。期待してはいけない。




きっと……そうに違いない。








思った瞬間涙が決壊して溢れる。
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