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溺れる金魚
第13章  記憶の無い朝
濡れた髪のままリビングのソファーに乱雑に身を投げた。



予定を早く切り上げた分、今日は休みにして良かった。

こんな状態で仕事など、想像しただけで憂鬱だ。



不意に置かれるマグカップ。

「崇志さん……大丈夫ですか?」



トレーを胸に抱えながら遠慮がちに掛けてきた声に一拍を置いて、勢いよく振り上げた頭に再び鈍痛。


「っく……」

こめかみを押さえて俯く。



「大丈夫ですか?……あの……佐野さん?」

跪いてすがる彼女に佐野はそっと顔を上げた。



……崇志さんと……今確かにそう呼んだ。


それなのに、失敗した。

自分の顔色に気付いて、彼女はまたすぐに佐野さんと呼び直した。

せっかく名前を呼んでくれたというのに……。



まるで昨夜の夢の続きのように。
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