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溺れる金魚
第13章  記憶の無い朝
じっと心配そうに見詰める彼女が愛おしい。


「あの……昨日の事、その、覚えて……ますか?」

伏し目がちに困惑しながら彼女が言ってくる意味が分からずに正直に答える。


「すまない。懇親会の前に飲んだ風邪薬が悪かったらしい。君に迷惑を掛けたみたいだな」


普段はあまり飲まない風邪薬をアルコールで流し込んだのがいけなかったか。

酒などそれ程飲んでいないというのに。



機内ではまだ秘書が共に居たから良かった。

悪酔いし、駅に着くまでは辛うじてあった記憶がタクシーに乗ると共に消えてしまった。




「……そうですか」

刹那彼女の表情がぎこちなく歪み、それから潮が引くように何事も無く立ち上がると、そのままキッチンへと消えていった。



……?

何か、不快なことでもしてしまったのだろうか。



彼女の態度に違和感を持ちながらも、まだ続く頭の痛さに佐野はそれ以上深く追求はしなかった。
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